信者Tに捧ぐ

Cult of the Lambというゲームをやっている。

所謂カルト教団運営ゲームである。

教団運営は実は初めてではなく、The Shrouded Isleで一度村を支配していたことがある。

あちらの邪神に比べてこちらの方が融通が利くし、信者同士の利権争いに気を配らなくてもよいので比較的順調に物事を進められている。

可愛い子羊教祖として時に聖戦に赴き、時に料理を作り、時に金を巻き上げていた。

いたって平穏なカルト教団であるといえた、はずだった。

トレトレという信者がいる。

所謂第一信者である。

性別は分からないので便宜上彼と呼ぶ。

彼は信仰心が高く、常に祈りをささげる任務をこなしてきた。

ある日、彼は私を呼び止めこういった。

love…

絶対的権力者とその右腕が”癖”な人間はちょっと「ん”っ」ってなった。

彼は時より私を呼び止めては様々なことを助言した。

「教祖様、教団が大きくなってきましたね。名前を決めたらいかがでしょうか」

「教祖様、彼は敵のスパイという噂があります。問いただしてはいただけませんか」

「教祖様、私に花を摘んできてはいただけませんか」

私はそれに応え、時に贈り物をすることで感謝の意を表した。

お互いの絆は確固たるものと思えた。

だがある時、祈念の近くで彼が他信者と仲睦まじい様子を見かけてしまったのだ。

は????

俺というものがありながら?????????

狂いの発生である。

あれは敬愛でしかなかったのか????運命の人とは俺ではなかったのか??????

「教祖様、反逆者と思わしきものが」

かつてそういって彼は無実の信者に罰を与えさせた。

「あの顔を見ましたか?これを超えるためにどのようなイタズラをしましょうか」

そういう兎なのだ。そういう兎なのだなお前は。

心をもてあそび、クスクスと笑う奴なのだ。

ああしかし、トレトレ、君は私の唯一になってしまっていた。


このゲームには年を取るというシステムが搭載されている。

高齢者は祈祷すらままならなくなるため、教団の方針としては生贄に捧げることにしている。

トレトレももう若くはない。

しかし、なぜ、私が彼を手放して神になど与えなければならないのだろうか。

神に与えるくらいならいっそ、知らぬ誰かに殺されて神話になる方が良いのではないか。

私は彼を危険な宣教任務へと送り出した。

任務へ赴くトレトレと見送る僕。

殉教してくれトレトレ。

ただこの子羊一人のために。

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